あらすじ

女神イナンナ 冥界に向かう

天と地を統治していた女神イナンナは、ある日、冥界へと心を向ける。彼女は司祭としての地位を捨て、また彼女のために建てられたすべての神殿を捨て、代わりに7つの「<メ(神力)>」を身に付けて冥界へと向かう。 しかし、冥界は「帰らざる国(行きて帰らぬ国)」と呼ばれるところ。一度、そこに足を踏み入れたものは生きて帰ることはできない。 イナンナは大臣ニンシュブルを呼び、「もし三日三晩、自分が戻らなければ神々の元に行き、嘆いて助けを求めよ」と命令する。

冥界に到着したイナンナは冥界の門番ネティに取り次ぎを頼む。ネティが冥界の女王エレシュキガルに取り次ぐとエレシュキガルは門番ネティ命じる。 イナンナの来訪を告げる門番ネティに命じる。 「冥界の7つの門すべてを閉じ、イナンナ自らに開けさせよ。そして、ひとつの門ごとに「<メ(神力)>を引き剥がすように」と。 イナンナは7つの門で7つの<メ(神力)>を取られ、そして衣服も剥がされてしまった。イナンナは、エレシュキガルと7人の裁判官の<死の眼>で<弱い肉(死体)>になり、釘に吊り下げられた。

三日三晩、戻らぬイナンナに、ニンシュブルはイナンナとの約束通り神々のところに行き、助けを求めた。しかし自分勝手に行ったイナンナに神々は冷たい。 最後に訪ねた大神エンキは、自分の爪からクルガラ、ガラトゥルという二体の精霊を作り、ふたりに「命の草」と「命の水」を与え、冥界に遣わす。ふたりは(なぜか)病で倒れている冥界の女王エレシュキガルのもとに行き、 彼女の心を開いてイナンナの体をもらい受け、「命の草」と「命の水」で生き返らせる。そして、 イナンナとともにエレシュキガルもよみがえるのです。


イナンナの冥界下りの原文

『イナンナの冥界下り』の原文はオックスフォード大学の『シュメール語文献電子テキスト集成(The Electronic Text Corpus of Sumerian Literature)』で読むことができます。